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【読書メモ】井筒俊彦「意識と本質Ⅰ」

私にとって「本質的思考」を否定できるという発見は、
私の人生をかなり生きやすくしてきたと思います。
その意味で、この『意識と本質』という本は、私を救った実践的な哲学書と言えます。

また、本質の否定という思考は、私が触れてきた社会学の背景にある思想です。
例えば、「国家」、「人種」、「正義」、「家族」に関する、かくあるべきというイデオロギーが、実は作られたものであるというように考えられるのは
これらの概念の本質性を疑うことができることを知ることによって可能になります。


一方で、我々は本能的にものを、普遍的、本質的に見てしまいますので
日常世界において「本質」認知から逃げることは困難です。

人を見て、「あれは人である」と思わないでいられる人がいるでしょうか。
何か花らしきものを見かけて、それを花であると了解すること。
ここにはすでに「本質」認知が存在しています。

我々は、少なくとも言語を使用する以上は、ある種の本質的思考からは避けられないようです。

「コトバの意味作用とは、本来的には全然分節のない「黒々として薄気味悪い塊り」でしかない「存在」にいろいろな符牒を付けて事物を作り出し、それらを個々別々のものとして指示するということだ。」

井筒俊彦は、言葉の性質には、「本質」があるかのようにみせかける機能があると指摘し、これを「本質」喚起機能と呼んでいます。


私は、言葉の本質喚起機能には常に注意して生活しなければ、と思っています。
言葉には、ないものを存在するかのようにみせかける機能があります。